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2015-03-03 07:41    レディース長財布ブランド
     6  ジョエルマが泣いているように見えた。  僕はベッドに横たわり、夢と現実の境目で中学生時代の悪夢を思い出していた。警備員に組み伏せられ、舐《な》めるように触れた鳩丸屋の床のひんやりとした冷たさは、あれから二十年が過ぎて三十三歳になった今も消えることなく体の中に在り続けている。  一人取り残されてからのこのベッドの冷たさも、どこかその感触に似ていた。  ポリスのCDはいつの間にか終わっていた。  あるいはジョエルマにも僕が泣いているように見えたかもしれない。しかし、実際のところは僕もジョエルマも泣いているわけではなかった。ただ僕は寝転がり、ジョエルマはいつもの場所にいつもの恰好《かつこう》で立ち尽くしていただけのことなのだ。  あの事件より少し前、死のことばかりを考えている時期があった。中学に進学したすぐの頃のことである。死そのものについて、深くつきつめて考えた。死ぬとはどういうことなのだろうか、どんな感じなんだろう、その先はどうなってしまうのだろうか。  自分という存在が絶対かつ不滅なものではなく、いつかは消え去ってしまうものであることを意識し始めたのである。中学一年になりたての少年にとって、それを考え続けることには相当な危険が伴っていた。  僕は常に漠然とした死の恐怖を抱きながら毎日を過ごすようになっていた。ベッドに横たわっていると、暗闇が胸にのしかかってくるような苦しさを覚えた。自分はいつか必ず、逃れられない宿命として、死ぬ。今、こうして怯えたり苦しんだり考えたりしている主体そのものが消えてしまう。  それはいったいどういうことなのだろう。そう考えると、胸の動悸《どうき》が高まっていった。  それから決まって、宇宙の果てとか永遠という概念について考え始めた。生と死という限りあることよりも、それはある意味ではより不可解で恐ろしく、激しい胸の痛みを僕に与えた。それでも僕は真正面からそれらのことに向き合った。迂回《うかい》する知恵も、知らないふりをするという策略もなかった。わからないことに思考を巡らせ、勝ち目のない対決を挑み続けた。その結果として得るものは、怯《おび》えや不安や胸の苦しみ、そんなものばかりだった。  毎日のようにそんな夜を送っているうちに、少しずつ神経が磨《す》り減り、いつも鬱々《うつうつ》としていた。  死というものを強く意識し、それを解決しようとしたことで、中学生だった僕は自分の力では溶かすことのできない大きな氷の塊を胸の中に抱えこんでしまったのだった。  神経の消耗は肉体へと連鎖していった。  食欲が極端に落ち、吐き気と腹痛につきまとわれるようになった。突然襲ってくる腹痛で夜の間中ベッドの上でのたうち回っていることもしばしばで、体は痩せて頬はすっかりこけてしまっていた。間欠的に襲ってくる腹痛に、歯をギリギリと食いしばって耐えながら、僕は考え続けた。  死とはいったい何なんだろう。  自分がいなくなるというのはどういうことなんだろうか。